酵素と酵母はよく混同されることがあります。もともと酵素(enzyme)の語源は「酵母の中にあるもの」という意味ですが、酵素と酵母は違います。
酵母とは酵素を生み出す微生物のことであり、酵素と同じではありません。その酵母はわずか1ミクロン~0.1ミクロンの植物性細菌です(1ミクロンは1ミリメートルの1000分の1)。
しかし酵母が私たちの健康に対してもたらしてくれる恩恵についてよく知っておくことは非常に大切です。
なぜなら酵母は熱や胃酸に負けることなく腸に届くと、腸内細菌のバランスを整えたり、善玉菌のエサになったりすることで、腸内細菌の集まりである腸内フローラを改善する働きをするからです。
また、腸内で消化酵素を生み出してくれるため、食べ物の消化が良くなり、その分、栄養素が吸収されやすくなります。そのため、酵母は消化不良を防ぐのにも重要な役割を果たしています。
さらに、酵母は免疫力を高めたり、糖尿病をはじめとした生活習慣病を予防したりしてくれます。
なぜ酵母にそのような働きがあるのかといえば、酵母には糖を分解することで「発酵」を起こすからです。酵母は酸素がある時は、人間と同じようにミトコンドリアで酸素を使ってエネルギーを生み出し、生命を維持しますが、酸素がない時は、「発酵」というシステムで、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解してエネルギーを生み出します。
酵母のこの「発酵」の仕組みは、ビールやワイン、みそやしょうゆ、パンやヨーグルトといった食品の製造に広く利用されています。
実はこの「発酵」によって糖分が分解されることが、血糖値とインスリンの上昇を抑えることにもつながるのです。また、「発酵」によって発生した炭酸ガスには、腸を刺激することで腸の蠕動(ぜんどう)運動を促すため、便通を良くする働きがあるとされています。そのため、酵母は便秘の予防・改善にも効果的です。
さらに酵母は「栄養の宝庫」と呼べるほどの様々な栄養素が含まれています。特に必須アミノ酸やビタミンB群、核酸といった栄養素は細胞の新陳代謝やエネルギー代謝に深く関わっているため、生命維持や健康維持のために非常に大切です。
酵母に含まれている主な栄養素
参考文献
酵母酵素研究会 著 丁胸鐵 監修 『酵母で健康になる 生きた酵母で腸から元気』 株式会社ジュリアン